DONのヨット暮らし

Mais ou sont les neiges d'antan?

2)Kasayanに聞く。小笠原航海、気象予報利用学

2012.7.10(火)
Kasayanに小笠原航海に際しての気象予報利用学の方法をたずねました。
ポイントは台風に遭遇する可能性を排除できるかです。
小笠原に着くまでに、そして着いてから。

Kasayanのコメント。


気象情報の検討手段
衛星電話を搭載するという条件でしたら、インターネットの利用は可能という前提で考えられます。
http://www.docomo.biz/html/service/widestar/

その場合は、いわゆる予報利用学の延長線上で考えていただくことになります。
八丈島を出港する際、明後日までの短期予報と週間予報(小笠原の予報チェックも忘れずに)をチェックし、専門の天気図のFXFE502・504・507や、週間予報用の専門の天気図FEFE19を参考にして予報の安全マージンを考え、向こう3日間の海況を考えることになります。

加えて、ウェザーサービス(http://www.weather-report.jp/com/professional/msm/kosui/japan.html)のHPで、数値予報の生データを参考にし(無料)、さらにウェザーニューズのLabsCh(月額350円)を契約し、数値予報やウェザーFAXと同様の天気図を入手し、未来の空模様を動きとしてイメージできるようにしておけば、鬼に金棒でしょう。


いったん出港してしまえば、小笠原まで避難港はありませんから、その後は、衛星電話で同じ情報をコマメに入手し、イメージした空模様に修正をかけて、必要とあれば引き返したり(出港時に安全マージンをとって判断していれば、その引き返しはまずないと思います)、機帆走でスピードアップ(早めに下り坂に向かうようであれば有り得ることだと思います)することになると思います。

ただ、NHKラジオの天気予報も毎日必ず聞いておきたいところです(朝5時過ぎの女の子の予報士の解説と、午後7時前の天気予報)。
なぜなら、衛星電話が不通になることも想定して、直近にチェックした実況天気図や予想天気図、府県天気予報をラジオの天気予報で修正したいからです。
普段は、インターネットで予報や気圧配置を把握して、ラジオを聞きながら「解説者は天気図や予報の何に着目しているのかな?」ということを考えながら、自分が予報を誤解していないか?をチェックし、いざというときは、ラジオの予報を最大限利用できるようにしておくわけです。

できれば・・・・天気図用紙を用意して、いざというときは、昔懐かしい手書きの天気図を書いて、バックアップにすることも考えておいても良いかもしれません(私は船に天気図用紙を積んでいました。臆病者なので・・・)。
もちろん、自分で予報をするためではなく、ラジオの天気予報を正しく理解するための道具として使うわけです。


3、注意点

以前、私がクルーをしていた船のオーナーが小笠原クルージングに行く際に、毎日1回、衛星電話でコンサルタントをしたことがありましたが、やはり台風の発生とコースが一番頭を悩ませるところです。
本日(5月22日)、台風2号が発生し、月末に向けて小笠原方面に向かうと予想されていますが・・・・小笠原への航海は、台風シーズン前の梅雨時がベストとされていても、台風がしばしばやってきます。

小笠原で(父島の二見港になると思いますが)台風をやり過ごすことは避けたいと考えるなら、八丈島から往復最低8日程度は確実に台風が来ないということを見極める必要があります。
さらに八丈島で台風をやり過ごすのも避けたいのであれば、10日間は台風が来ないことを見極めたいところです。

しかし、これからの季節、まるまる向こう10日間台風が来ないと予測することは困難です。
多かれ少なかれ、航海中に「台風発生」の一報を耳にすることになると考えておいたほうが無難でしょう。

とすれば、台風(熱帯低気圧も同じように危険ですから熱帯低気圧も含めて)発生の一報には、陸上にいるとき以上に敏感になって、出港やコース判断の資料にする必要があります。

また、小笠原滞在期間を短くして、とんぼ返りに帰路につく勇気も必要になることも覚悟しておくべきだと思います。
(以前のコンサルタントでは、苦渋の判断で父島一泊で帰路についていただきましたが、結果的に台風が小笠原を通過し判断は正解でした。)



長々書いてしまいましたが、やっぱり小笠原は特別だと思います。
ここまで考える必要はないかもしれませんし、多くの場合は問題なく小笠原を往復できますが、歯車がズレた瞬間に特別な状況に陥ります。
私が岡本造船(YCC)に船を置いていた頃、小笠原に向けて出港した仲間の船が台風に遭遇して転覆、デスマストして遭難・・・幸い下田の保安庁に救助されて命は助かりましたが、歯車のズレに早く気付くことと、ズレに対するレスポンスの早さの必要性を教えられました。

腰が引ける必要はないと思いますが、船のバックアップ部品のように、気象情報もバックアップを用意する気持ちで準備して、素晴らしい小笠原航海を実現させてください。

もし、海上で気象情報に疑問がありましたら、衛星電話で以下の携帯に遠慮なくお電話下さい。

090-XXXX-XXXX

その際は、緯度経度、船上から見える雲の形と雲量(日本式:全天を10とした雲の割合)、風向風速と波高・波向(体感的でOK)を教えていただけると、対応が早いと思います。

以上は小笠原航海を始めるに当たっての気象予報利用学方法への
Kasayanのアドバイスです。

次に以下は
無事、小笠原航海を終え、母港熱海に帰港した後、
いただいたKasayanのコメントです


無事の帰港と、小笠原航海の成功おめでとうございます。

 気象サポートといっても、単に気象庁発表の予報と生データを整合させつつ、航海中の空模様をイメージしやすいように翻訳しただけですから、大したことはさせていただいておりません。

 あくまで予報利用学の発展形として・・・・気象庁の府県天気予報・週間予報・海上予報を未来の空模様として頭の中にビジュアル化して、気象庁の数値予報で安全マージンを考え、さらにアメリカの数値予報も参考にして、「万が一」がないことを想定しただけのことです。

 また、予報はしていません。
 そもそも予報を提供するとなれば気象庁への予報業務許可申請が必要になりますし、相応の設備投資や体制構築が必要になってしまいますから・・・・・。
 もはや予報提供を生業にしておりませんので、私自身、本当に納得できる予報を作成できる状態ではありません。
 あぶなっかしい予報の作成作業は日本の頭脳・・・気象庁にまかせて、それを上手に味わわせていただく・・・・これが現在の私のモットーです。

 結局、テレビの解説者の解説をちょっと深めたカタチで解説させていただいて、普段から十分に天気予報を使いこなしておられる西郷さんの背中を少しだけ押させていただいただけとお考えください。